を行っており、教育内容の充実を学校法人等と協議しながらすすめている。管理職者の育成に関しては、大学における観光学科設立のバックアップをすすめているところであり、現職の管理職者については民間企業との協力体制の中で派遣・出向・研修事業を行っている。
今後は観光リゾートの人材育成に関する窓口を一本化するとともに、各種公的予算も一元化し、効率的な運用ができるように組織や制度を整備することが必要であろう。
また、行政における観光のプロパーを育成する時期にきていると考えられ、組織人事の考え方に抜本的な改善が必要であろう。
(5)教育機関
教育機関における課題では、教員の質的向上のための施策として、他の教育機関との連携が重要で、教員を育てるための機会を増やすべきである。専門教員の研修に関して高等学校では、浦添商業高校等が県のプロジェクトによって積極的に教員の研修を行っている。学生、生徒の企業実習の状況は、専門学校等で積極的に連携を取っているが、大学では試行錯誤の段階である。教育機関における企業等からの研修の受け入れについては、カリキュラムの未整備によって実現されていないが、夜間にコースやカリキュラムが設定されている大学では、観光学の学習のために社会人入学者がある。しかし、所属企業からの支援は受けていない場合が多く、個人的な問題意識によって学習しているケースがほとんどとみられる。
企業や行政と教育機関の連携は非常に大きな課題であり、観光学が現場に近い科学であるため、両者の交流は今後積極的に進めていかなくてはならない。名桜大学では、観光産業学科を設け、立教大学やハワイ大学のカリキュラム、学科運営を参考にしながら、本格的に高等教育を始めている。行政や民間企業もこのような動きを支援しており、今後の具体的な教育・研究に期待できる。
4. まとめ
「人材育成」と一言でいっても、具体的な問題はさまざまな角度から捉えるべきであり、各機関や立場によって果たすべき役割が異なっている。この問題を単に行政や教育機関の問題とせず、企業や社会もそれぞれの立場で役割を担っていく態度が求められる。観光立県を標榜する沖縄県にあって観光産業の人材育成は、観光産業への理解から始める必要がありそうである。本土と沖縄という区別を考え方の中から払拭し、客観的に産業として捉える視点が重要である。現実にホテルの従業員は沖縄出身者がほとんどを占めており、管理職でさえ地元の人材が育ってきている。観光産業の振興のためには、感情論に惑わされない冷静な視点が求められ、資本の所在よりも雇用の場の確保と拡大を議論することが建設的であろう。
政策的には、人材育成の総論的な制度の整備ではなく、各機関や組織の役割に応じた方策を示していくべきである。
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